今現在，ビジネスフォンもPBXも様々な機能が充実してきており，その境界があまりはっきりしなくなってきました。正直なところ，「外線の電話回線を何本使用できるか」「内線電話機を何台まで接続できるか」というところでPBXとビジネスフォンの線引きをしている状況です。しかし，質問者様のお話しのような導入規模であればPBXを導入するメリットはなく，むしろ機器の維持管理コストが上昇すると考えられます。そうした点を考えると，ビジネスフォンシステムを導入された方が低コストで導入でき，今までの感覚に近い運用方法がとれます。PBXを導入すべきなのは，外線電話回線が何十本とあり，内線電話機の台数も１００台以上となるような大規模なシステムを必要とする場合とお考えいただければ結構です。
PBXで小規模でも導入できるものとするとクラウド型PBXというものがあります。これは，従来社内に設置していたビジネスフォンの主装置（電話機を集中制御している交換機のようなもの。PBXでいうところの構内電話交換機本体）を社内に設置しない代わりに，サービス提供会社のネットワークのクラウド上に電話交換機の機能を持たせ，社内の電話機はIP電話機というタイプのものをLANケーブルで接続して使用するというものになります。このタイプは低コスト省スペースで導入でき，レイアウトや設定変更も従来より容易であるためシェアを拡大しつつありますが，停電等の災害時バックアップ・社内ネットワークと相互接続して使用している場合高度な情報セキュリティ対策が必要となること・稼働の安定性に問題があること・機能が従前からのビジネスフォンに比べて少ないことなどの弱点も多く，導入にはハードルが高いかと思います。そうした点も含めて考えるとビジネスフォンに軍配が上がるかと思います。
以上を踏まえ，スマートフォンの内線での利用や社外での利用時における社内の電話との連携強化という点も考慮したビジネスフォンシステムとなると，以下のものが挙げられると思います。それらは操作性の良さもさることながら，今までのビジネスフォンに比べてデザイン性もよくなり，オフィスのインテリア等にもマッチしたものを選ぶことができるようになってきています。スマートフォンでも専用アプリを利用することにより，デスク上の多機能電話機とほぼ同等の使い勝手を実現しています。以下順を追って代表機種を列記していきます。
⑴ 日立情報通信エンジニアリング製 S-integral
この機種であればスマートフォンを従前の机上の多機能電話機と同じような感覚で使用できるのみではなく，事務所出入口等にカメラ付きインターホンを設置しそのインターホンから呼出を受けた場合は，スマートフォンの画面で来訪者の顔をみて応対することも可能ですし，遠隔操作で出入口の電気錠の施開錠操作も可能です。恐らく，スマートフォンの内線化ではかなり扱いやすい部類になるかと思われます。机上の多機能電話機についても，補聴器使用者が扱いやすいようなヒアリングエイド対応の受話器となっているなど，工夫が凝らされています。なお，この機器はナカヨという会社からも「NYC-Si」という商品名で発売されています。
製品HPへのリンク：http://www.hitachi-ite.co.jp/products/et/si/index.html
⑵ NECプラットフォーム製 UNIVERGE Aspire WX
「AXモバイルリンク」という機能でスマートフォンを内線化できますし，スマートフォンの内線化アプリも２種類あります。ですが，基本的なビジネスフォンの扱いやすさをスマートフォンにも求めるとすると少々扱いにくいかもしれません。しかし，⑴と同様，この機種もヒアリングエイドに対応していたり，そのほかにもこの機種はVPN対応しており，IP多機能電話機とVPNの組み合わせにより在宅勤務をはじめとするテレワーク環境を構築しやすいというメリットもあります。
製品HPへのリンク：https://www.necplatforms.co.jp/product/aspire_wx/
⑶ SAXA（サクサ）製 PLATIAⅡ
「MLiner」という機能でスマートフォンを内線化できますし，扱いやすさは従前の机上の多機能電話機と同等です。但しスマートフォンの通話料金プランを定額制プランに変更する必要があります（他社の機種で同機能を利用する場合も定額制プランを導入する必要があったり推奨であったりします。）。このメーカーの電話機
の強みは，社内の多機能電話機には全て人勧センサーが搭載されており，侵入者を検知すると指定された電話に対して自動的に緊急通報を行い，室内の音声を拾って通報先に状況を知らせることができます（場合によっては，通報を受けた先の方が，音声で侵入者を威嚇することも可能です）。また，緊急地震速報受信機との連動で，緊急地震速報が発令された場合は社内の全電話機のスピーカーを通して警報を流すこともできるようになっており，社内の防犯防災にも力を発揮します。電話機のデザインもスタイリッシュでどんな環境にもマッチします。
製品HPへのリンク：https://www.saxa.co.jp/product/business/platia2/
以上の他にもNTTの「SmartNetcommunity αA1」やIWATSU（岩崎通信機）の「LEVANCIO」「LEVANCIO-S」もあります。NTTの機種はデザイン性が劇的に向上しましたし，IWATSUの２機種は複数の支店間の通話のコストダウンや異なる拠点間の連絡にかかる時間の短縮・効率化に大きな効果を発揮するかと思います。しかし，スマートフォンを内線化した際の扱いやすさは⑴～⑶の方が上かと思われます。中でも⑴と⑶がその点では優れており，在宅勤務やテレワーク面では⑵が優れていると思われます。⑴～⑶のいずれの場合も，出先社内問わず，スマートフォンから会社の電話回線を使用して相手先に電話をかけることができ，個人の携帯を業務で使用させた場合でも個人携帯の番号を相手に知られてしまうといったことを防ぎながらも電話連絡を取ることができ，料金定額制と会社の番号で発信できるこの機能を併用すれば，外勤社員のスマートフォンを内線電話化することで社員個人の情報保護と社用携帯電話の契約見直しによる台数変更でコストダウンを図ることも可能です。また，社内の内線電話機の相当台数をスマートフォンでの内線にしてしまうことで，社員数の増加等で電話機の台数やオフィスのレイアウト変更の際の対応も安価かつ容易に対応可能ですし，社用の携帯電話機の回線数・台数の見直しで携帯電話回線を減らせば会社の通信コストを削減することが可能ですので，導入の利点も非常に大きいです。
こうした諸々の点を考慮の上，複数の電話工事業者様から見積もりを取り，比較検討された方がよろしいかと思います。
